大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和34年(オ)1022号 判決 1960年11月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高後芳雄の上告理由第一点について。

所論は、裁判書交付の経緯につき原判決(その引用する一審判決)が認定した事実は原判決挙示の証拠からは認められない旨を主張するものである。しかし判決挙示の証人の証言及び書証を総合して判決記載どおりの事実を認定することは不可能ではない。所論は、原審の事実認定の攻撃に帰し、採用のかぎりでない。

同第二点について。

所論は、原判決は「処分あつたことを知つた日」の解釈を誤つた旨主張するものである。しかし、原審の認定によれば、上告人の留守中叔父の鈴木武夫が上告人方の家事一切を管理し農地買収に関する書類等をすべて受け取つていたというのであり、右判示は、本件裁決書の如きも鈴木において受領権限を有していた旨認定した趣旨と解すべきである。かように本人のために受領権限を有する者が本件裁決書を受領したものである以上、上告人本人が裁決のあつたことを知つた場合と同視すべきことは当然であり、これと同旨に出たものと解すべき原判決は正当である。所論引用の判例は、本人の不在期間中留守居の者が本人に代り受領権限を有するものと認められない場合に関するものであつて、本件に適切でない。

同第三点について。

所論中証拠によらないで事実を認定したとの論旨の採り得ないことは第一点において述べたとおりである。また、本人のために受領権限を有する者が裁決書を受け取つた以上本人が裁決を知つた場合と同視すべきこと前述のとおりであるから、鈴木から裁決の事実を聞き知つた具体関係につき審理判断を要するものでないこともいうまでもない。論旨は理由がない。

同第四点について。

所論の指摘する被上告人の主張は、鈴木武夫が本人のために裁決書受領の権限を有していた旨の主張を含むものと解するのが相当であるから、当事者の主張しない事実を認定したとの非難は当らない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例